目次
SMARTの法則は、適切な目標を設定する有効な手法として知られています。
しかし、具体的にどのようなものかよく分からない人もいるのではないでしょうか。
この記事ではSMARTの法則の意味やメリット、目標設定方法や具体例、効果的に活用するポイントなどについて詳しく解説します。
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SMARTの法則とは
目標も立てずに業務に取り組むだけでは、成果も成長も望めないでしょう。
「仕事に懸命に取り組む」「新規顧客を増やす」といった漠然とした目標を設定しても、具体的な指標がないために達成したかどうかが判断できません。
そこで、適切な目標を設定するのに有効な方法として活用されているのが「SMARTの法則」です。
<関連記事>組織の目標管理と個人の目標管理を両立させる人事システムとは?
SMARTの法則の概要
SMARTの法則とは、5つの要素に従って具体的で効果的な目標を設定する手法を指します。
- Specific:具体的な
- Measurable:測定可能な
- Achievable:達成可能な
- Relevant:関連している
- Time-bound:期限が明確な
設定する目標は高すぎても低すぎても適切とはいえず、懸命に努力すれば到達できるレベルの難易度であることが重要です。SMARTの法則の5つの要素を意識すれば、適切な水準の目標を立てやすくなります。達成の精度も高まるでしょう。
SMARTの法則の歴史
SMARTの法則は、1981年にジョージ・T・ドランが発表した論文「There’s a S.M.A.R.T. way to write management’s goals and objectives」に基づいて生まれた手法です。
ジョージ・T・ドランは、論文内で、目標を設定する際に取り入れる必要がある要素として先の5つを提示しました。
SMARTの法則の各要素を取り入れて目標を設定することで従業員がモチベーションを維持でき、成功の確率が高まるとしています。
SMARTの法則は時代遅れなのか?
提唱されてから相当の年月が経っているため、「SMARTの法則は古い、時代遅れ」といわれることもあるのは事実です。
SMARTの法則では、達成可能な目標を具体的に定めます。
達成可能かどうかを意識すると、どうしても短期目標を設定しがちになります。そのため中長期的な目標設定が難しいといわれるケースがあります。
また、不確実性の高いVUCA時代では、急激な変化に対応しながら柔軟に目標設定を行うことが求められます。外部環境の変化への適応力を考えると、SMARTの法則は時代遅れといわれてしまうのです。
しかし、今でもその有用性は損なわれていません。
SMARTの法則には、目標を定量的に可視化することで達成可能性を高めるメリットもあり、日本の多くの企業で用いられています。
また、経営コンサルタントなどによってブラッシュアップされたSMARTの法則の発展型が用いられることもあります。
活用シーンや目的によっては、SMARTの法則が時代遅れとは言い切れないでしょう。
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SMARTの法則の5つの要素と目標設定のやり方
最初の段落で述べたように、SMARTの法則は「Specific / Measurable / Achievable / Relevant / Time-bound」の5つの要素からなります。
ここでは、それぞれの要素の考え方と目標設定の方法についてみていきましょう。
1.Specific(具体性)
Specificは、「具体的な」「明確な」といった意味を持つ英単語です。SMARTの法則においては、目標は具体的なものであることが重要となります。
仮に、「高い収益性を実現する」「ヒット商品を作る」といった抽象的なゴールでは、「何をもって達成とするのか」を判断する基準が不明確です。
目指すべき具体的な状況が分かりづらいため、目的に向かって何をどのようにすればよいか分からないでしょう。
目標は「年間売上30%の成長」「年間10万個を売る」といった具体的な内容で設定することが大切です。誰が聞いても解釈が分かれない、明確な内容にしましょう。具体的な内容であれば達成したかどうかが判断でき、目的に向かって何をどうすればよいのかを考えることもできます。
2.Measurable(計量性)
Measurableは「測定可能な」「測れる」という意味の英単語です。
SMARTの法則においては、目標は測定可能な内容(=数値化できるもの)にすべきとしています。
これは、数値化することで、「達成状況」や「ゴールまでの進捗」「足りない部分」が明確になり、判断しやすくなるためです。
たとえば、「お客様に喜ばれるサービスを提供する」といった内容を設定した場合、「喜ばれるサービス」の基準が曖昧で数値化できず、先に述べたSpecific(具体性)の条件も満たしていません。
どのような条件を満たせば達成したことになるのか、達成に向けてどのようなアクションを取るべきかが分かりづらいでしょう。
この場合、「お客様にアンケートを実施して、顧客満足度を60%から80%に上げる」といったように数値化すれば、達成可否を判断できるようになります。
3.Achievable(達成可能性)
Achievableは「(目標などを)成し遂げられる」「達成可能な」といった意味合いの英単語です。売上や利益が高いことが喜ばしいとはいえ、目標をやみくもに高く設定することは望ましくありません。なぜなら、到底達成できないような数値を設定してしまうと、従業員が「どうがんばっても無理だ」と感じてしまい、意欲を消失する場合があるためです。
たとえば、現時点でのTOEICスコアが300点台の従業員がいるとしましょう。来月実施されるテストで900点を取得するという目標を立てても、達成は容易ではありません。分からないことが多いため、学習意欲を保つのも難しくなるかもしれませんが、ほとんど努力しなくても達成できる目標は、従業員の成長には結びつきません。
達成時に充実感ややりがいを覚えることもないでしょう。目標は、「ゴールに向かってひたむきに努力すれば達成可能なレベル」で設定してこそ意味があります。
4.Relevant(関連性)
Relevantは「関連性のある」「妥当な」といった意味の英単語です。
SMARTの法則では、目標は組織の目的や事業・業務と関連していて、妥当な内容であるべきとしています。
たとえば、Webマーケティングの担当者が「自社サイトのコラムを毎月20本更新し月間1万PVを達成する」との内容で設定した場合、業務に関連しているため妥当であるといえるでしょう。
一方、業務で必要のない資格取得をゴール地点として設定した場合は、妥当な目標とはいえないでしょう。
5.Time-bound(期限)
Time-boundは「期限が明確」「期限を定めた」を意味します。
目標設定を行う期限を定め、いつまでに達成するのかを決めることが大切です。どれほど優れた内容であっても、期限が決まっていなければ、日々の業務を優先して後回しになる場合があります。
「いつまで」という期限があるからこそ、間に合わせようと方法を考え、集中して取り組めます。1年後などのあまり長いスパンで期限を切ると、当面の行動を定めることが難しくなります。
そのため、年間、半期、四半期、月、1週間、1日などの単位で複数の期限を設定しておくとよいでしょう。「年間売上を2,000万円から3,000万円に引き上げる。そのためには半期で〇円、1カ月で〇円の売上が必要になり、週あたり〇件の受注が必要」などと具体的に落とし込むことで、何をいつまでにすべきかが明確になります。
SMARTの法則を用いるメリット3つ
SMARTの法則を活用することで、業務や評価、人材育成において多くの利点が得られます。ここでは、なかでも代表的な3つのメリットを紹介します。
メリット1:業務効率の向上
SMARTの法則では、期限を定めて具体的で数値化できる目標を設定します。
そのため、従業員は「目標を達成するためにどのような行動を取ればいいか」「いつまでに何をどれだけ進めておくべきか」が把握可能です。
従業員が自主的に行動を選択できるようになり、結果として業務の効率化が図れます。
<関連記事>【従業員のパフォーマンス向上】効果的な方法としてのマネジメントとチームワークの戦略
メリット2:人事評価の基準の明確化
SMARTの法則では、数値化を意識して目標を設定します。
数値によって実績が可視化されるため、従業員が目標を達成したか、どの程度の成果を上げたか、といった判断が可能です。
基準が明確になるため、人事評価も公平に行えます。
「人事評価が公平に行われているかどうか」は、従業員にとって極めて重要な関心事といえます。
コンサルティング会社が2023年に実施した人事評価制度に関する意識調査によると、約75%の従業員が、自社の人事評価制度に不満を感じていたと報告されています。
不満を抱く大きな理由は、「評価基準が不明確である」「評価の担当者によってばらつきがあり不公平に感じる」というものでした。
従業員が不満を抱えたままであれば、仕事意欲の減退や離職につながりかねません。SMARTの法則を用いて目標を設定すれば従業員が納得できる評価が実施できるため、このようなリスクを軽減できるでしょう。
<関連記事>人事評価制度とは?意味・導入の目的・注意点など徹底解説!
メリット3:従業員のモチベーションアップ
「優れたサービスを提供する」といった曖昧なゴールでは、従業員も達成したかどうかを判断できません。
なぜなら、どういったサービスが優れていると感じているかは、人によって変わるからです。一方、「今月、新規契約を50件獲得する」といった具体的な内容であれば、クリアできたかどうかの判断は容易です。
従業員は、目指す地点に到達できたことで満足感や達成感が得られます。
また、「来月は60件の獲得を目指そう」など現状よりも少し高い難易度の目標に挑戦しようとする姿勢が生まれやすくなります。仕事にやりがいを感じられ、モチベーションの向上にもつながるでしょう。
また、仮に期限まであとわずかの時点で契約数が48件だった場合、なんとしてでもあと2件の契約をこなそうと努力するでしょう。従業員の意欲を喚起し、さらなる成長を後押しする効果も期待できます。
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SMARTの法則を活用するポイント4つ
SMARTの法則は、ポイントを押さえて活用することで、より高い効果を発揮します。ここでは、押さえておきたい4つのポイントを解説します。
1.成果目標と行動目標を設定する
設定に当たっては、「成果目標」と「行動目標」の2つを設定することが大切です。
成果目標とは、「今年の売上を昨年の1.5倍にする」「採用コストを前年比5%削減する」といった最終的に目指す地点のことです。
行動すれば必ず達成できるわけではなく、適切な筋道に沿って地道な努力を続ける必要があります。
行動目標とは、「1週間に見込み顧客を10件訪問する」「週に2回営業ロープレを実践しクロージングを鍛える」といった、自分が動けば達成できる目標です。
行動目標は、成果目標を達成するための具体的な手段となります。
たとえば、成果目標を「今月の売上を100万にする」と設定したとしましょう。
すると、扱う商材の単価や受注率、アポイント率などから計算して「今月10件受注」「1週間に5件の商談」「1日20件のテレアポ」といった行動目標が設定できます。具体的な行動目標を設定しこなしていくことで、成果目標の達成に近づくでしょう。
このように、成果目標とあわせて行動目標も設定することで、目標達成に向けた道筋が明確になります。
2.定期的に振り返りを行い改善する
1度設定した目標を、そのままにしてはいけません。
定期的に振り返りを行い、必要に応じてゴール地点を修正したりアクション内容を改善したりする必要があります。
これは、SMARTの法則を用いて綿密に目標を立てても、状況の変化や見通しの甘さなどにより、うまくいかないことも少なくないためです。
また、行動目標は順調にこなせているものの、成果目標に対して思ったような結果が出なかったり、想定以上に目標達成が難しかったりすることもあるでしょう。
反対に、実際に取り組んだ結果、想像以上に早く達成してしまいそうというケースもあります。
このように、最初に立てた目標が常に適切とは限らないことを認識し、定期的な振り返りと見直しを行いましょう。
3.実際に目標を書き出し確認する
目標は頭のなかで想定するだけでなく、実際に書き出すことが大切です。書いて視覚化することで、SMARTの法則の各要素をきちんと満たす内容で設定できているかを確かめられます。
書き方に厳密なルールはありませんが、管理しやすいフォーマットの一例を紹介します。
2列6行の表を作成し、左列の一番上の行から順に「目標」「Specific」「Measurable」「Achievable」「Relevant」「Time-bound」と書いていきます。
そして、右列で各要素を満たしているかどうかを考えながら、各項目を埋めていくとよいでしょう。
一通り書き出せたら、改めて見直し、内容に改善点がないか丁寧にチェックすることが大切です。たとえば、以下のような観点からよく検証し、効果的な目標を設定しましょう。
- 目指す地点が高すぎないか
- 自分の技量を大幅に超えるものではないか
- 抽象的ではないか
- 無理な期限を設定していないか
内容を何度も見直すことで、より現実的かつ効果的な目標設定が可能になります。
4.状況の変化に応じて活用する
企業活動のグローバル化や技術革新の加速、消費者のニーズの多様化やマーケット構造の変革など、各産業を取り巻く市場は目まぐるしい変化を続けています。
コロナ禍もあり、1年後のマーケットの状況を予測することすら簡単ではありません。そのため、綿密に検討して立てた目標であっても、状況にそぐわないものになるケースは珍しくありません。
変化していく状況に対応するためには、目指す方向性を柔軟に変えることも大切です。SMARTの法則を活用することで、新たな状況にも適した目標かどうかを客観的に見直すことが可能です。
SMARTの法則の注意点と対策3つ
ここでは、SMARTの法則を活用するうえで注意すべき点と、その対策について解説します。
抽象度の高い要素にも着目する
SMARTの法則で、Specific(具体性)ばかりに固執しすぎると、柔軟性を失うことがあります。
たとえば、「月末までに商談を10件獲得する」といった数値目標ばかりを優先すると、短期的な成果に偏りすぎてしまいます。
その結果、長期的な関係構築や創造的な取り組みがおろそかになることもあります。抽象度の高い目標とは、たとえば「顧客との信頼関係を深める」「チームの創造性を高める」などを意識することです。
定量目標だけでは測れない価値に向き合う姿勢が生まれます。SMARTのフレームに固執せず、柔軟な視点で目標を捉える姿勢も求められます。
達成可能にこだわりすぎない
SMARTの法則のAchievable(達成可能性)に意識が向きすぎると、実現可能で無難な目標ばかり設定してしまう可能性があります。
測定可能で達成の見込みが高い目標ばかりでは、インパクトのある成果に結びつかない可能性があります。
対策としては、チャレンジングなストレッチ目標を設定し、成長を促すことが重要です。
中長期目線の目標も設定する
SMARTの法則は「達成可能性」を重視するため、現実的で短期的な目標に偏りがちです。
しかし、ビジネスシーンでは、数日・数週間で達成できる目標に加えて、数年後に目指す姿も掲げるはずです。
SMARTの法則に引っ張られすぎないよう、少し先を見据えた目標を設定するとともに、中長期的なキャリアビジョンも併せて描くことが望まれます。
目先の達成に集中しつつも、未来志向を失わないバランスのとれた目標管理が実現できるでしょう。
SMARTの法則を活かした目標設定具体例
SMARTの法則は、ビジネスにおけるさまざまな部署で目標を設定する際に活かせます。ここでは、採用や営業など、具体的な職種別にSMARTの法則を活用した目標設定例を紹介します。
営業部門の目標具体例
数多くある職種のなかでも、目標を常に意識する必要があるのが営業職です。成果を上げるためにも、適切なゴールを設定することが欠かせません。ここでは、営業部門におけるSMARTの法則を活用した目標設定の事例を紹介します。
- Specific(具体性):月間売上を30%増加させる。
- Measurable(計量性):1日50件のテレアポ営業を行い、週に10件のオンライン商談を獲得する
- Achievable(達成可能性):テレアポの数を先月の倍に増やし、オンライン商談で効率化することで達成可能な目標設定となっている。
- Relevant(関連性):支社の売上目標に直結する内容であり、妥当である。
- Time-bound(期限):今月の締め日まで
人事部門(採用)の目標具体例
人事部門でも、目標設定に当たってはSMARTの法則を活用するとよいでしょう。たとえば、採用業務では、採用人数や応募者数、書類選考の通過率、面接回数などを決めるときに活かせます。ここでは、新卒採用に関する例を紹介しましょう。
- Specific(具体性):新卒の応募者数を50人から80人に増やす
- Measurable(計量性):カジュアル面談を60人以上実施する、オンライン説明会を3回開催する
- Achievable(達成可能性):大学との連携やSNS活用を通じて新卒生との接点を増やすことで、達成可能な目標である。
- Relevant(関連性):人手不足の解消に向けて採用人数の増加が求められており、業務に直結する妥当な目標である。
- Time-bound(期限):〇月末までに達成する。
技術部門(ITエンジニア)の目標具体例
エンジニアは、日々の業務の中でスキル向上やプロジェクトの進行管理など、定量的な目標を設定することが重要です。若手エンジニアの育成やプロジェクト貢献を目的としたSMARTの法則による目標設定の例を紹介します。
- Specific(具体性):新規開発プロジェクトで担当モジュールの設計・実装を完了させる
- Measurable(計量性):レビュー指摘件数を5件以内に抑える/プログラムの8割以上に対して動作確認のテストを実施する
- Achievable(達成可能性):週2回のコードレビュー参加と先輩社員のサポートを受けながら進めることで実現可能
- Relevant(関連性):プロジェクトの品質向上とチーム全体の納期遵守に貢献する目標であるため妥当
- Time-bound(期限):プロジェクトリリース予定日の前日まで(〇月〇日まで)に完了する
SMARTの法則の発展型3例
SMARTの法則が提唱されたのは1981年です。その後、さまざまな人によってブラッシュアップや改良が加えられた発展型の法則が登場しています。
ここでは、主な発展型を3つ紹介します。
1.SMARTER
「SMART」の後ろに「E」と「R」が付け足された形です。
Eは「Evaluated(評価された)」、Rは「Recognized(承認された)」の頭文字から来ています。
つまり、SMARTの法則の各要素にプラスして「部下が設定した目標を上司が評価しているか」「承認しているか」も要素として取り入れた形です。
SMARTの法則に比べて、より客観性が高い点が特徴です。上司による評価や承認が前提となるため、目標設定のプロセスにも変化が生じます。
2.SMARTTA
「SMART」の後ろに「T」と「A」が追加された形です。
Tは「Trackable(追跡できる)」、Aは「Agreed(合意がある)」から来ています。Trackableは、ゴール達成に向けてこれまでに取り組んだ行動や経過を振り返り、把握できるかといった意味合いです。
トラックできることで、ゴールに対して現状ではどの程度の位置まで来ているのか、次にどのような行動を取るべきかが分かります。
Agreedは「チームメンバーなどの関係の間で合意が得られているか」「メンバーが納得している内容か」といった、チームを基準とした指標です。メンバーが個別に目標を立てても、チーム全体としての目標達成には結びつかない可能性があります。
Agreedを要素として取り入れることで、チームメンバー間で目標の共有が可能になります。ともにゴールを目指そうという一体感が生まれるでしょう。
また、共に達成を目指すメンバーの存在が、個々のモチベーション向上にもつながります。
3.SMARRT
「SMART」に「R」を加えたものです。このRは「Realistic(現実的な)」から来ています。
Realisticは達成可能かを意味するAchievableとよく似ており、SMARRTにおいてはほぼ同じ意味と捉えても問題はないでしょう。
意図的に類似の要素を加えることで、より現実的かつ具体的な目標設定が可能になります。
SMARTの法則が活用できる目標管理手法(OKRとMBO)
SMARTの法則は、いくつかの代表的な目標管理手法にも応用されています。
ここでは、その中でも特に知られている「OKR」と「MBO」の2つについて解説します。
OKR
OKRは「Objective & Key Results」の略称で、目標管理手法の1つです。GoogleやFacebookといった企業が採用したことで、広く注目されるようになりました。
Objective(目標)は「どのようになりたいか」を示す目標であり、Key Results(主要な成果)は、Objectiveが達成されたかどうかを判断するために設定された指標です。
Objectiveは目標ではあるものの、数値で表す必要はありません。
ただし、シンプルかつ具体的な内容にすることが大切です。
通常、1つのObjectiveに対して、3~5つ程度のKey Resultsを設定します。5つ以上になると達成のための指標が多くなりすぎて、進捗管理が複雑化し、かえって遅れの原因になることもあるため、避けるのが望ましいとされています。
OKRが決まったら実践に移し、定期的に振り返りを行います。以下に、OKRの設定例を紹介します。
- Objective(目標):1年後に〇〇の分野でトップシェアを獲得する
- Key Results(1):売上を前年比〇%アップする
- Key Results(2):新規顧客を〇件開拓する
- Key Results(3):リピート率を〇%アップする
OKRでは、達成度合いを測る指標となるKey Resultsを設定する際に、SMARTの法則が適用できます。具体的かつ数値化できる内容となるため、有効な指標として機能するでしょう。
<関連記事>OKRとは? OKRの要素や導入メリット・OKR運用サイクルの流れを解説
MBO
MBOは「Management By Objective」の略で、目標管理制度と訳されます。
経営学者のピーター・ドラッカーが提唱し、1960年初頭に日本に入ってきました。その後広く普及した歴史があり、現在でも多くの企業が採用しています。
MBOでは、従業員自身で目標を設定し、達成に向けてどのようなタスクを行うか、どのような成果が出たかを自らが管理します。
従業員が主体的に目標の決定から達成に向けての進捗度合いの管理まで行うため、モチベーションを維持できる・向上する点がMBOの大きなメリットです。自主的に行動できる人材の育成にもつながります。
OKRではKey ResultsをSMARTの法則を取り入れることが一般的なことに対して、MBOではそのような決まりはありません。
しかしMBOで目標を設定する際も、SMARTの法則を意識するケースが増えています。SMARTの法則を活用することで、目標設定がしやすくなり、達成に向けた進捗管理も明確になります。
<関連記事>個人と組織、双方の目標達成が叶う。MBOとは?
SMARTの法則以外の目標設定方法
目標設定に活用できるフレームワークは、SMARTの法則以外にも複数存在します。
ここでは、代表的な3つの手法を紹介します。
FASTの法則
目標を設定する手法に、4つの要素から構成される「FASTの法則」があります。
FASTの法則は、2018年にマネジメントの専門家であるドナルド・サルとチャールズ・サルによって提唱された4つの原則から生まれた法則です。4つの要素は以下のとおりです。
- Frequent(頻繁な):目標は頻繫に議論される
- Ambitious(野心的な):不可能ではない範囲において野心的な目標である
- Specific(具体的な):具体的な指標とマイルストーンで計測できる
- Transparent(透明な):組織の全員から見えるよう透明性が保たれている
SMARTの法則との共通点は、目標は具体的なものにすべきという点です。
一方、FASTの法則とSMARTの法則とでは、「実現可能性を重視するかどうか」の点で大きく異なります。
SMARTの法則では達成可能であることを重視しますが、FASTの法則で重視するのは「(可能な範囲で)野心的な目標であること」です。
これについて、法則の提唱者は「野心的な目標を持つ従業員は、難しくない目標を持つ同僚よりも優れたパフォーマンスを発揮する」と説明しています。
野心的な目標を達成するために必要な要素として存在するのが、FrequentとTransparentです。Frequentは、目標に向かって起こした行動が本当に達成に必要かどうかを頻繁に議論することを意味します。
頻繁に目標を振り返ることで、不要な行動や努力を回避することができます。Transparentは、周囲から見える透明性を保つことを意味します。透明性を保つことで、客観的な視点が維持できます。
CLEAR目標設定
CLEARは、Adam Kreekが提唱した目標設定のフレームワークで、次の5つの頭文字から名づけられました。Adam Kreekは元オリンピック金メダリストで、従来のSMARTの法則に限界を感じて、CREARの法則を導き出しました。
- Collaborative(協力的な):メンバーが目標設定に協力的である
- Limited(範囲が限られた):目標設定をする領域、対象、範囲が限定的である
- Emotional(感情的な):目標に対して、感情的な共感やつながりを持てる
- Appreciable(評価可能な):達成可能なステップに細分化して評価が容易である
- Refinable(改善可能な):変化に応じて改変可能である
CREARの目標設定は、環境変化に応じて柔軟に目標を変えられる点が特徴です。また、チームの協働性や感情面を重視したフレームワークにより、プロジェクトチームの目標達成に適した目標設定が可能になります。
HARDゴール
HARDゴールは、SMARTの法則よりも感情面に重きを置いた目標設定のフレームワークです。
2010年にMark Murphyが書籍で提唱し、人生やキャリアの本質的な目標にアプローチする方法として注目されています。以下の4つの要素から構成されています。
- Heartfelt(心からの):自分の本音から「本当に達成したい」と思える目標
- Animated(具体的なイメージ):達成後の自分の姿が鮮明に想像できる
- Required(必要不可欠な):自分にとって欠かせないスキルや経験を明確にする
- Difficult(困難):簡単には達成できない挑戦的な内容を含む
SMARTの法則が論理的・実行可能性重視のアプローチであるのに対し、HARDゴールは「自分の内面にどれだけ響くか」を軸にしています。
そのため、目標が途中でブレてしまいやすい、あるいは情熱を持って取り組めないと感じている人にこそ適しています。感情に根ざした目標は、行動の持続性や自己成長を強く後押ししてくれるでしょう。
SMARTの法則を活用して適切な目標を設定し達成しよう
SMARTの法則は、「具体性」「計量性」「達成可能性」「関連性」「期限設定」の5要素から成る目標設定のフレームワークです。それぞれの要素を意識することで、明確かつ実行しやすい目標を設定できます。
目標設定後も定期的に振り返りを行い、状況に応じて柔軟に見直すことが重要です。SMARTの法則を活用して適切な目標を設定し、仕事での成功を目指しましょう。
HRMOSタレントマネジメントでSMARTな目標・評価管理を
HRMOSタレントマネジメントは、目標管理と評価管理、等級・報酬の決定まで、人事評価の全プロセスを効率化するシステムです。
システムを活用することで、明確で測定可能な目標を設定でき、進捗の可視化、評価の集計・調整、報酬算出までを一元管理できます。
SMARTの法則に基づいた「分かりやすく・実行しやすい目標運用」を実現したい方は、HRMOSタレントマネジメントの機能を確認してみてください。